「神栖市の人口は減っているのに、なぜ地価は下がっていないのだろう」。売却相談の現場でこうした疑問をよく耳にします。工業地帯を抱える神栖市は、一般的な「人口減少=地価下落」という単純な図式が当てはまらない、やや特殊な動きを見せる街です。この記事では茨城県・神栖市公式の統計データと国土交通省の地価公示データを基に、神栖市の人口と地価の長期推移を数字で確認していきます。
神栖市の基礎データ|人口・世帯数・面積
茨城県統計課「茨城県常住人口調査」によると、2026年(令和8年)4月1日時点の神栖市の常住人口は92,927人、世帯数は43,141世帯です(2020年国勢調査結果を基準とする推計値)。面積は146.97平方キロメートル(令和8年1月1日現在)、人口密度は1平方キロメートルあたり632.3人です。
神栖市は2005年8月に旧神栖町と旧波崎町が合併して誕生した市で、鹿島臨海工業地帯の中核をなす街として知られています。合併の経緯から、市内は大きく「神栖地区」と「波崎地区」に分かれ、それぞれ街の成り立ちや雰囲気が異なります。
神栖市はどんな街か|神栖地区と波崎地区
神栖市は茨城県の南東端、太平洋と利根川に挟まれた立地にあり、南は利根川を挟んで千葉県銚子市・香取市に接しています。市域は大きく、市役所やハウスドゥの営業エリアにも近い「神栖地区」と、旧波崎町にあたる「波崎地区」に分かれます。神栖地区は鹿島臨海工業地帯に近く企業関連の需要が厚いエリア、波崎地区は太平洋沿岸に面し漁業や住宅地としての性格が強いエリアという違いがあります。この二つの地区の成り立ちの違いは、後述する地価のエリア差にも表れています。
神栖市の人口はどう変化してきたか|国勢調査8時点の推移
総務省統計局「国勢調査」による人口の長期推移を見ると、神栖市の人口は他の茨城県内自治体とは異なる独特の軌跡を描いています。
| 調査年 | 人口(人) |
|---|---|
| 昭和60年 | 72,533 |
| 平成2年 | 77,596 |
| 平成7年 | 83,171 |
| 平成12年 | 87,626 |
| 平成17年 | 91,867 |
| 平成22年 | 94,795 |
| 平成27年 | 94,522 |
| 令和2年 | 95,454 |
昭和60年の72,533人から令和2年の95,454人まで、約35年間で人口は3割以上増加しています。茨城県内の多くの市町村が減少に転じている中、神栖市は令和2年国勢調査でもピーク圏内を維持していた数少ない自治体のひとつです。ただし、令和8年4月1日現在の推計人口は92,927人で、令和2年の95,454人からは緩やかな減少局面に入っていることも公式データから読み取れます。

茨城県内における神栖市の人口規模
神栖市の人口約9万3千人は、茨城県内44市町村の中でも上位に入る規模です。県庁所在地である水戸市(約26万人)やつくば市、日立市といった県内主要都市と比べると小さいものの、鹿行(ろっこう)地域と呼ばれる鹿嶋市・潮来市・行方市・鉾田市を含むエリアの中では最大の人口を有しています。工業地帯を核とした雇用力の強さが、この人口規模を支えてきた大きな要因といえます。
年齢別の人口構成と人口動態
茨城県統計課「茨城県常住人口調査」(令和7年10月1日現在)による年齢別人口割合は、15歳未満11.6%、15〜64歳63.1%、65歳以上25.3%です。65歳以上の割合は茨城県平均(約30%前後)と比較してもやや低く、現役世代の比率が高いことが特徴です。
県医療政策課「茨城県人口動態統計」によると、令和6年の出生数は635人、死亡数は1,098人で、自然動態としては減少傾向にあります。一方で、産業別就業人口割合(令和2年・国勢調査)は第2次産業38.47%・第3次産業56.36%と、県内でも製造業の比率が高い構成になっており、工業地帯への就労を目的とした転入が人口を下支えしてきた構造がうかがえます。
人口を支えてきた鹿島臨海工業地帯という背景
神栖市の人口が長期的に増加基調を保ってきた背景には、鹿島臨海工業地帯の存在があります。石油化学・鉄鋼・電力などの大規模企業が集積するこのエリアは、市内外から多くの就労者を呼び込む雇用の受け皿となってきました。
この構造は財政面にも表れています。茨城県統計課「市町村のデータ(神栖市)」によると、神栖市の財政力指数は1.34(令和6年度)と、県内市町村の中でも際立って高い水準です。財政力指数が1を超えるということは、地方交付税を必要としないほど自主財源(主に企業からの固定資産税・法人関連税収)が豊富であることを意味します。歳入492億32百万円に対し歳出465億59百万円(令和6年度決算)という堅調な財政運営も、この産業基盤に支えられています。
茨城県内の人口減少市町村との違い
茨城県内では、県北地域を中心に人口減少が続く自治体が多く見られます。それらの自治体と神栖市を比較すると、神栖市は長期にわたり人口増加基調を保ってきた点で異質な存在でした。ただし、令和2年をピークに緩やかな減少局面へ転じつつある現在の傾向は、県内の他自治体が数十年前から経験してきた変化を、神栖市もようやく迎えつつある段階と見ることもできます。今後の推移は、鹿島臨海工業地帯の企業動向や周辺インフラ整備の状況によって左右される可能性があります。
神栖市の地価はどう動いてきたか|長期推移
国土交通省の地価公示データを集計したtochidai.info等の情報によると、神栖市の住宅地の公示地価(坪単価・目安)は、2011年頃の75,400円前後から下落局面に入り、2015年前後は65,800円前後、2019年前後は60,300円前後まで下がった後、2020年代前半は6万円前後で底値圏の推移が続きました。その後2025年に64,100円前後、2026年(令和8年)は64,500円前後(平米単価約1.95万円/㎡)まで回復し、前年比では小幅ながら上昇に転じています。
茨城県内の地価上昇率ランキングで見ても、神栖市は前年比+1.26〜+1.5%程度の上昇となっており、44市区町村中でも上位の上昇率グループに入っています(tochi-value.com集計)。これは、県内平均よりも神栖市の地価が力強く回復していることを示すデータです。

神栖市の地価は茨城県内でどの水準か
地価公示価格チェッカー(tochi-value.com)の集計によると、神栖市の住宅地の公示地価平均は坪単価約6.8万円で、茨城県44市区町村中30位に位置します。県内では鹿嶋市(約7.1万円/坪)や石岡市(約6.8万円/坪)と近い水準にあり、かすみがうら市や茨城町よりは高いという中位のポジションです。全国順位では1524市区町村中1152位となっており、突出して高いわけではないものの、工業地帯を抱える自治体としては底堅い水準を維持しているといえます。
エリア(町域)別に見る地価の違い
神栖市内でも、地価の水準はエリアによって大きな差があります。GMO不動産査定(e-estate.jp)が公表する町域別ランキングによると、最も地価が高いのは大野原(約12.3万円/坪)、次いで堀割(約10.1万円/坪)、溝口(約9.29万円/坪)と続きます。一方、市の南西部にあたる矢田部は約3.02万円/坪と、最高値エリアの4分の1程度の水準にとどまっています。
神栖地区と波崎地区という成り立ちの違いに加え、鹿島神宮駅(隣接する鹿嶋市)や銚子駅(隣接する千葉県銚子市)へのアクセス距離、工業地帯や国道124号沿いの商業集積との近さなどが、この価格差を生む主な要因と考えられます。神栖市は鉄道駅が市内に存在しないため、駅からの距離よりも幹線道路へのアクセスが地価形成に影響しやすい点も特徴です。
「人口減少でも地価は下がりにくい」構造をどう見るか
一般的には人口減少が続くと住宅需要が細り地価は下落しやすいとされますが、神栖市の場合はこの数年、人口が緩やかに減少する一方で地価はむしろ上昇に転じています。この一見矛盾する動きにはいくつかの要因が考えられます。
第一に、鹿島臨海工業地帯における企業の設備投資や事業拡張が、周辺の住宅・商業需要を下支えしている可能性です。第二に、世帯数が43,141世帯(令和8年4月現在)と人口の減少ペースほどには落ち込んでおらず、単身・少人数世帯の増加が土地・住宅需要を一定程度維持していると考えられます。第三に、建築資材費や人件費の高騰という全国的な要因が、神栖市に限らず地価の下支え要因として働いている可能性もあります。
ただし、これらはあくまで公表データから読み取れる傾向であり、将来の地価動向を保証するものではありません。エリアや個別の土地条件によって相場は大きく異なるため、断定的な予測は避け、あくまで「目安」として捉えることが重要です。
実家や所有地の売却を検討する際に知っておきたいこと
神栖市で実家や所有する土地の売却を検討する場合、上記の市全体・エリア別データはあくまで目安であり、実際の売却価格は土地の形状、接道状況、用途地域、そして神栖地区か波崎地区かといった立地条件によって大きく変動します。特に鉄道駅がない神栖市では、幹線道路からの距離や、鹿島神宮駅・銚子駅など隣接エリアの主要駅へのアクセス性も査定に影響します。
また、鹿島臨海工業地帯に近いエリアでは、住宅地としての需要だけでなく事業用地としての需要が絡むケースもあり、一般的な相場情報だけでは判断が難しい場面も少なくありません。ご自身の実家・所有地が今どのくらいの価値を持つのか正確に把握したい場合は、地域の取引実績を持つ不動産会社による無料査定を活用することをおすすめします。神栖市エリアの子育て環境や交通、生活利便性など街全体の情報は神栖市の住みやすさガイドで、実家が空き家になっている場合の解体補助金制度については神栖市の空き家 解体補助金は100万円|条件と売却の順番で詳しく解説しています。耐震改修や浄化槽設置に補助金を使うべきか迷う場合は、神栖市の住宅補助金|耐震・浄化槽・蓄電池【2026】もご確認ください。
神栖市エリアの不動産売却について、もっと詳しく
神栖市を含む鹿行(ろっこう)エリアは、鹿嶋市とともに鹿島臨海工業地帯を抱える茨城県内でも独自の需給構造を持つ地域です。隣接する鹿嶋市の住みやすさガイドと合わせて確認いただくと、鹿行エリア全体の傾向がより把握しやすくなります。エリア全体の不動産売却に関する基本情報は神栖市の不動産売却・買取・査定ページにまとめています。実家が農地付きの場合は農地・農地付き空き家の売却|農地法3条・5条の壁とは【鹿行エリア】もあわせてご確認ください。過去の取引実績は売却査定実績とお客様の声のページでご覧いただけます。
よくある質問(FAQ)
神栖市への移動手段(高速バス・コミュニティバス・自動車)は神栖市の交通アクセス完全ガイドで詳しく解説しています。
神栖市の人口は今後も減少しますか?
令和2年国勢調査の95,454人をピークに、令和8年推計では92,927人まで緩やかな減少局面に入っています。ただし将来の人口動向を断定することはできず、あくまで直近の公式統計から読み取れる傾向としてご理解ください。
神栖市の地価が上昇しているのはなぜですか?
鹿島臨海工業地帯による雇用・経済基盤の安定、世帯数の底堅さ、建築費高騰などの全国的要因が複合的に影響していると考えられますが、単一の断定的な理由があるわけではありません。
神栖市内でも地価が高いエリア・低いエリアはありますか?
大野原・堀割・溝口周辺が比較的高く、矢田部など市南西部は市内でも低めの水準です。神栖地区と波崎地区でも成り立ちの違いから傾向が異なります。
神栖市に鉄道駅はありますか?
神栖市内にJRなどの鉄道駅はありません。隣接する鹿嶋市の鹿島神宮駅や、千葉県銚子市の銚子駅、香取市の下総橘駅などが最寄り駅として利用されています。
神栖市の財政力指数が高いのはなぜですか?
令和6年度の財政力指数は1.34と、鹿島臨海工業地帯の企業からの固定資産税・法人関連税収を中心とした自主財源が豊富なことが主な理由です。
神栖市の実家の売却相場を正確に知るにはどうすればいいですか?
市全体やエリア別の公示地価はあくまで目安です。土地の形状や接道状況、神栖地区・波崎地区の別などによって実際の価格は変動するため、無料査定で個別の状況を確認することをおすすめします。
神栖市の世帯数はどのくらいですか?
令和8年4月1日現在で43,141世帯です(茨城県統計課「茨城県常住人口調査」)。
まとめ|神栖市は「工業地帯を核とした独自の需給構造」を持つ街
神栖市は、鹿島臨海工業地帯という強い産業基盤を背景に、県内の他自治体とは異なる人口・地価の動きを見せてきました。長期的には人口増加基調が続いた後、直近数年は緩やかな減少局面に入る一方、地価はむしろ上昇に転じているというねじれた状況にあります。この特殊な需給構造を理解した上で、実家や所有地の売却タイミングを検討することが大切です。
ハウスドゥ 家・不動産買取専門店 県庁水戸では、神栖市を含む鹿行エリアの売却相談を承っています。まずはお気軽に無料査定・ご相談ください。
神栖市の子育て支援制度(子育て応援券・かみす子育て住まいる給付金・マル福神福)について詳しくは神栖市の子育て支援制度|応援券3万円・給付金100万円【2026】をご覧ください。
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