「実家を解体して更地にした。これで土地を売れる」——そう思っていたら、いざ売買の話が進んだ段階で「登記簿にまだ建物が残っています」と止められた。実際に起きるトラブルです。
建物を壊しても、登記の記録は自動では消えません。所有者が自分で申請する必要があり、しかも法律で期限が定められた義務です。
この記事では、解体の前後で必要な届出と期限を時系列で整理し、水戸市での相談先までご案内します。
解体の「前」にも届出があります
意外に知られていませんが、解体工事を始める前にも手続きが必要です。

建設リサイクル法の届出
水戸市は、こう案内しています。
床面積80平方メートル以上の建物であれば、発注者は工事着手7日前までに建設リサイクル法に基づく届出書の提出が必要です。
ここで重要なのは「発注者」が届け出るという点です。つまり工事を頼んだ側、多くの場合は所有者であるお客様自身の義務です。実務では解体業者が代理で提出することが一般的ですが、義務を負っているのは発注者だと理解しておいてください。
80平方メートルは約24坪
一般的な戸建て住宅は延床30〜40坪程度ですから、ほとんどの住宅の解体が該当します。「うちは小さいから関係ない」とは考えないほうがよいでしょう。
アスベストの事前調査も必要
同じく床面積80平方メートル以上の解体では、アスベストの事前調査結果を行政へ報告することが義務づけられています(2022年4月から)。この費用も工事代金に含まれます。
他にも届出が必要な場合がある
水戸市は「他にも様々な届出が必要となる場合があります」としています。建築指導課指導係(水戸市役所5階・Tel 029-224-1111 内線3444)でご確認ください。
出典:水戸市「建物を解体する際は、どのような届出が必要ですか。」(2022年7月21日更新)
★解体の「後」は1か月以内に滅失登記
不動産登記法が定める義務
建物が滅失したときは、表題部所有者または所有権の登記名義人が、その滅失の日から1か月以内に滅失の登記を申請しなければならないと定められています(不動産登記法57条)。
起算点は解体が完了した日です。契約日でも支払日でもありません。
怠ると10万円以下の過料
正当な理由なく申請を怠った場合、10万円以下の過料に処するとされています(同法164条)。
本当に困るのは「土地が売れない」こと
過料よりも実害が大きいのはこちらです。登記簿に建物が残っていると、実際は更地でも「建物付きの土地」として扱われます。
買主が住宅ローンを使う場合、金融機関は登記簿の状態を確認します。存在しない建物が登記されたままでは抵当権の設定に支障が出て、融資が下りません。決済直前に発覚して引き渡しが延期になる——実務でよくある事故です。
市への届出も別に必要
法務局の登記と、市の課税の手続きは別です。固定資産税の課税を止めるため、市の担当課への届出が必要になる場合があります。登記だけで安心しないでください。
必要な書類と費用
用意するもの
- 建物滅失登記申請書(法務局の様式)
- 取壊し証明書……解体業者が発行します
- 解体業者の印鑑証明書
- 解体業者の資格証明書(法人の登記事項証明書など)
- 建物の登記事項証明書(家屋番号の確認用)
- 案内図(住宅地図の写しなど)
★取壊し証明書の受け取りが最重要です。工事完了時に必ず一式を請求してください。後回しにして業者と連絡が取れなくなると、手続きが一気に難しくなります。
費用
滅失登記に登録免許税はかかりません(非課税)。自分で申請すれば実費の数千円で済みます。土地家屋調査士に依頼する場合は4〜5万円程度が目安です。
申請先
建物の所在地を管轄する法務局です。水戸市の物件なら水戸地方法務局が管轄になります。窓口・郵送・オンラインのいずれでも申請できます。
水戸市には空き家のワンストップ相談窓口があります
これは水戸市が用意している制度で、意外に知られていません。

NPOと協働の総合相談窓口
水戸市は、特定非営利活動法人 ふるさと空き家相談・サポートと協働して「空き家に関するワンストップ総合相談窓口事業」を実施しています。
空き家の適正管理、利活用、解体、家財道具の処分といった相談に対して、所有者が個別の専門家に相談しなくても、NPOが窓口となって解決策を案内してくれる仕組みです。
連絡先
特定非営利活動法人 ふるさと空き家相談・サポート
水戸市五軒町2丁目2-7 電話 029-291-6363
電話・メール・LINEで相談を受け付けています。
使い分けの目安
「何から手をつければよいかわからない」段階なら、こうした窓口が有効です。一方、「売るといくらになるのか」を知りたいなら、不動産会社の査定が早道です。目的に応じて使い分けてください。
出典:水戸市「空き家に関するワンストップ総合相談窓口事業を始めました」(2024年4月12日更新)
解体前に考えていただきたいこと
更地にすると固定資産税が上がる
建物があることで住宅用地の特例が効いています。小規模住宅用地(200平方メートル以下の部分)は課税標準が6分の1、それを超える部分は3分の1に軽減されています。
解体して更地にすると、この特例が外れます。売却まで時間がかかると、その間の税負担が増えます。
解体費用は売主の持ち出し
解体費用に加え、建設リサイクル法の届出、アスベストの調査、見つかれば除去費用。これらを先に支払っても、その分だけ高く売れる保証はありません。
「現況のまま売る」という選択
建物付きのまま売れば、解体費用も届出も不要です。買主が解体するかリフォームするかを判断し、その費用を織り込んで価格が決まります。
解体の見積りを取る前に、一度「現況のまま売った場合」の査定を受けてみてください。手取りを比べれば判断できます。
解体業者を選ぶときの確認事項
①建設業許可または解体工事業登録があるか
解体工事を請け負うには、建設業許可(解体工事業)または解体工事業の登録が必要です。契約前に確認してください。
②見積書の内訳が示されているか
「解体工事一式 ○○万円」だけの見積書は避けてください。本体工事費、廃棄物の処分費、養生費、重機の回送費、諸経費——内訳が分かれていることが重要です。
特に廃棄物の処分費は量によって変わります。家財が残っていれば、その分費用が上がります。
③届出を誰が行うか
建設リサイクル法の届出は発注者の義務ですが、実務では業者が代理します。「代理で提出してもらえるか」を契約時に確認してください。
④取壊し証明書を出してもらえるか
これを確認しない方が多いのですが、後で最も困る点です。「工事完了時に取壊し証明書と印鑑証明書、資格証明書をいただけますか」と、契約前に聞いておいてください。
⑤近隣への説明をどうするか
解体工事は音と粉じんが出ます。近隣への挨拶を業者が行うのか、所有者が行うのかを決めておくと、トラブルを避けられます。水戸市の旧市街のように隣家が近い地域では特に重要です。
売却の流れの中でいつ解体するか
基本は「売れてから」
買主が決まってから解体するのが、費用面では最も合理的です。売買契約に「引渡しまでに更地にする」と定めれば、買主の希望に沿った状態で引き渡せます。
先に解体すべき場合もある
建物の傷みがひどく倒壊のおそれがある、防犯上の問題があるといった場合は、売却を待たずに解体する判断もあります。近隣への責任は所有者にあるためです。
解体後は速やかに登記
順序は解体完了 → 取壊し証明書を受領 → 1か月以内に滅失登記 → 市へ届出 → 売却手続きです。「売れてから登記すればいい」と考えると、決済日に間に合わせるため慌てることになります。
放置するとどうなるか
相続人が増える
滅失登記をしないまま所有者が亡くなると、相続人全員が関わる手続きになります。世代が下るほど人数が増え、合意が難しくなります。
解体業者と連絡が取れなくなる
業者が廃業・移転すると、取壊し証明書が取れなくなります。この場合、上申書や現地写真、固定資産税の課税明細などで滅失を証明することになり、本来数千円で済む手続きが何倍にも膨らみます。
何十年も前の建物が残っているケース
相続した土地の登記を確認したら、祖父母の代に取り壊した建物が登記されたまま——水戸市でも見かけます。この場合は土地家屋調査士への依頼が現実的です。
よくある質問
Q. 1か月を過ぎてしまいました
気づいた時点ですぐ申請してください。期限を過ぎても申請自体は受け付けられます。放置するほど書類が集めにくくなります。
Q. 納屋や倉庫も登記されていますか?
されている場合があります。母屋だけ滅失登記をして附属建物を忘れる——これが最も多い見落としです。登記事項証明書ですべての建物を確認してください。
Q. 未登記の建物はどうなりますか?
登記がなければ滅失登記の対象外です。ただし市の課税台帳には載っていることがあるため、市への届出は別途必要になる場合があります。
Q. 建設リサイクル法の届出は業者がやってくれますか?
実務では業者が代理で提出することが一般的ですが、法律上の届出義務者は発注者です。契約時に「届出はどちらが行うか」を確認してください。
Q. 自分で滅失登記できますか?
できます。登録免許税もかからず、書類が揃っていれば難しい手続きではありません。ただし古い建物や未登記が混在するケースは専門家への依頼が確実です。
Q. 遠方に住む親族の代わりに、自分が代理で申請できますか?
できます。建物の所有者本人以外が窓口で手続きする場合は、委任状を準備してください。決まった書式はありませんが、委任者(所有者)の氏名・住所・建物の表示・「滅失登記の申請を委任する」旨を正確に記載し、実印を押すのが通常の形です。申請先の法務局によって求められる添付書類が異なる場合があるので、事前に電話で確認しておくと二度手間になりません。委任状の準備が難しい状況であれば、土地家屋調査士に依頼すれば委任状の作成から申請まで任せられます。
Q. 火災で焼失した場合も同じですか?
同じです。滅失の日から1か月以内に申請します。この場合は消防署が発行する罹災証明書などが証明書類になります。
まとめ
- 解体の前:床面積80㎡以上なら建設リサイクル法の届出を着手7日前まで。義務者は発注者=売主
- 同じく80㎡以上の解体ではアスベストの事前調査と報告が必要
- 解体の後:滅失の日から1か月以内に建物滅失登記(不動産登記法57条)。怠ると10万円以下の過料
- 実害が大きいのは「土地が売れない」こと。登記簿に建物が残ると買主の住宅ローンが通らない
- 法務局の登記と市の課税の手続きは別。市への届出も忘れずに
- 登録免許税は非課税。自分なら実費数千円、土地家屋調査士なら4〜5万円程度
- ★解体業者から取壊し証明書を必ず受け取る
- 更地にすると住宅用地の特例が外れて固定資産税が上がる。解体前に手取りの比較を
- 水戸市には空き家のワンストップ総合相談窓口(NPOふるさと空き家相談・サポート 029-291-6363)がある
水戸市の解体・土地売却はハウスドゥ 県庁水戸へ
「解体したけれど登記を何もしていない」「古い建物の登記が残っている」——その状態からご相談ください。土地家屋調査士・司法書士をご紹介し、売却スケジュールに間に合うよう進めます。
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※本記事は2026年8月時点の情報にもとづく一般的な解説です。当社は登記の代理申請を行うことはできません。届出の要否は水戸市建築指導課(029-224-1111)、登記手続きは水戸地方法務局または土地家屋調査士・司法書士へご確認ください。
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